鬼大集合

2011.10.13.14 島根県・隠岐島町


●力作ぞろい

秋季薩摩川内の「せみ凧大集合」、新春東京板橋の「うさぎ大集合」、秋季東京晴海「とんび大集合」、新春板橋「龍凧大集合」に続いて、五回目の大集合が、2012年10月13~14日、第122回日本の凧の会秋季大会(島根県隠岐の島町)で開催されました。

五島の兜バラモン、平戸の鬼ヨウチョウ、見島の鬼ヨウズ、隠岐のいぐり凧など、大陸に面した地域に、鬼を意匠とする凧が集中して残されています。これは凧揚げが長男誕生の祝いとなる以前の、失われた凧の役割を断片的に語っています。鬼凧には、鬼の霊威と「唸り」の音霊で凶事を追いやる意味があったのではないか……。もともと交通の不便な遠隔地に、これらの凧が残されている理由には、その起源の古さがあるのでしょう。我々が知ることなく廃絶してしまった、多くの鬼凧のなかで、これらの凧は「生きた化石」として今にその伝統を伝えています。

 

今回の大集合は、鬼凧集中地帯で開催されます。もちろん、これは元来「切り部の鬼」をモチーフとするとされる「いぐり凧」に敬意を表してのことです。

 

「鬼凧大集合」の参加者は二七人、二六枚(うち一点は二人で一枚、一件は一人で二枚、凧のみの参加三枚)でした。今回は大会に先立ち10月1日より12日まで隠岐汽船ターミナル二階展示スペースで展示も行われました。隠岐の町役場が窓口となってくださり、隠岐いぐり凧保存会の青砥宏雄さん手島明雄さんほかの皆さんが、全国から送られてきた鬼凧を丁寧に展示してくださいました。会場は新しい建物で、フェリーが到着すると必ず通る通路に面しています。まるで隠岐を訪れた人を鬼凧たちが歓迎しているようでした。自分の作った鬼凧に、こんな形で再会するのも、また嬉しいものでした。

伊地知英信


六角凧「風」江刺祐造(東京)

江口洸一(福岡)

東日本大震災一年目の3月11日の追悼凧揚げ用に白地六角凧を江刺祐造が製作。

福岡での追悼凧揚げで飛翔。その後、鬼凧大集合に向けて福岡の江口洸一さんが絵を

描いた両者の合作です。鬼の絵は北斎漫画からとりました。(7ポイント/15)

泣いた赤鬼凧 

中川弘(千葉県)

「泣いた赤鬼」の童話を元にしてパソコンで描いた泣いた赤鬼の可愛い画像を

六角凧にしてみました。(3ポイント/3)

ウォーキングカイト 

春田親邦(千葉県)

200枚作ってきました。

当然人気とりのためです。

ただで凧をくれるという事で、目論見どうり凧と本人の人気は上がりました。

(2ポイント/13)


おにエイ 

茂出木雅章(東京都)

エイ凧をもとにしました。うまく作れたかな? また人に作らせた?(陰の声)

なんと言われようが、おいらが一番!!

(6ポイント5)

裏鬼奴 

伊地知英信(東京都)

鬼が空の向こうへ逃げていく姿を凧にしました。金棒を背負った後ろ姿です。

この凧を揚げると、どんどん向こうに行くように見えて愛らしい凧です。

いつものことながら時間がなくて試作品で本番に参加する事になりました。

隠岐の空にあがるのが楽しみです。

(9ポイント/1)

鬼凧 

渡辺高一(山梨県)

羅生門の綱です。

(3ポイント/16)


道成寺 

高草仁(兵庫県)

鈴木其一の写しです。糸目はよく揚がるように自分で変更しました。

色は主に顔料。時間ができたら染料でも描く。反省

(7ポイント/16)

酒呑童子 

大江眞琴(富山県)

御存知、大江山の酒呑童子。本邦はもちろんイタリア、フランス‥‥の空でも大活躍。

絵の出典は一英斉芳艶の絵です。

(5ポイント/7)

いぐり凧 

手島明雄(島根県)

もともといぐり凧の描かれていたという鬼の絵でいぐり凧を作って見ました。

隠岐島前神楽で舞われる切部を描いたものです。

(9ポイント/34)


鬼嫁ローター 

永由辰春

妻も若い頃はきれいだった。今はまささに鬼(薄い字)。

言おうものなら我どこで暮らせば良いのやら。ローター部は鬼嫁(婿)テール部は壱岐鬼凧。

(9ポイント/25)

鬼連凧 

濱弘二(宮城県)

百足凧の頭部を鬼にして作ってみました。

(9ポイント/34)

三ッ目の鬼凧 

田中芳郎(長野県)

大きさは3.5メートル×2メートルあります。

園芸用のパイプを骨に使っています。

(7ポイント/9)

 


花祭り榊鬼 

中村勝輔(愛知県)

愛知県奥三河の春は花祭りの鬼が呼び寄せる、ティホーティホー!

花祭りの主役「榊鬼」を凧に作ってみました。名古屋古流凧仕上げです。

うなりも見事にビービーと鳴きます。楽しい凧揚げができます。

(6ポイント/9)

般若 

中村光江(愛知県)

日本の角、大きく裂けた口をもつ鬼女の面です。女性の憤怒と嫉妬を表し「葵の上」

「道成寺」に登場します。面打ちの般若坊が作ったと伝えられる能面を凧にしてみました。

名古屋古流仕立てで作ってあります。煤竹を使ってあります。(10ポイント15)

般若 

加藤善実(愛知県)

大変よく揚がり‥‥‥? 夜の凧揚げ時には特に目立ちますヨ!

(注)目に注目。LEDで光る様になっています。

(10ポイント/17)


花祭りの鬼

服部安彦(愛知県)

花祭りは、鎌倉時代から室町時代にかけ修験者により始まったといわれます。

この祭で自然の恵みや五穀豊穣をもたらす鬼です。

この鬼の凧を作って良かったです。

(11ポイント/17)

名古屋凧 

山田武嗣(愛知県)

鬼の恐ろしさとユーモア感を色彩良く大胆に描いてみました。

揚がるとうなりがブーニブーニ鳴り楽しい凧に仕上がりました!!

(5ポイント/3)(8ポイント/14)

なごやふう鬼凧 

佐々津岐是(愛知県)

ベカベカと震って揚がります。それなりの風がなければ揚がりません。

風に乗るまでひと苦労。大きな欠点。頭から落下したら一パツでおしゃかに。

(6ポイント/5)


名古屋古流凧般若 

研谷厚(愛知県)

名古屋古流凧の般若です。骨は煤竹で皮みせです。

(16ポイント/28)

ふとん鬼凧 

福井栄(大阪府)

蒲団凧で作りました。(大きな凧なので他の鬼凧とは別に展示されていました。

そのため気づかれずに、褒めシールの数が少ないものと思われます)

(1ポイント/2)

富山型いぐり凧 

長谷川眞常(富山県)

雷夫婦の会話「下界ではお客がお待ちのようだ」『ええ、あとは風神さんにお任せしましょう」

自慢1、骨がいぐり凧と同じため、風に強く轟音を響かせながら真一文字に上昇します。

2、結束バンドを切断し分解可能。3、いろいろな絵柄を描き、骨で着せ替えができる。

(2ポイント/39)


体凧青鬼 

寺岡好徳(石川県)

鬼の顔に見えたら幸いです。妻と競って作りました。糸の張りと凧骨の直角と

直線の幾何学模様が魅力です。骨がショックに弱いのが欠点かな。

(6ポイント/13)

立体凧赤鬼 

寺岡紘子(石川県) 

鬼に見えますよね。孫達も鬼だよと言ってくれました。

主人には負けます(作り方揚げ方)。でも私なりに頑張って作りました。

よろしくお願いします。(2ポイント/6)

鬼面クバの葉凧 

仲間清隆(沖縄県)

毎度のクバの葉(ビンロウ)です。天然の葉の形をそのまま利用しました。

鬼面に切り抜きました。夕方揚げると眼と鼻が浮で出てオドロオドロしいです。

(2ポイント/6)

☆作者不在のためモデルは井上さん。


いぐりシャクシメー 

三本木善吾(沖縄県)

石垣島のシャクシメー(糸のぼり)を隠岐のいぐり凧(切部の鬼)

のデザインしてみました。大会が終わったら隠岐の皆さんにプレゼントします。

高いところに展示されていて皆さんシールが貼れませんでした。       

 ☆作者不在のためモデルは川上さん。 

妖怪と鬼 

松坂芳朗(東京都)

漫画のキャラクターを凧にしました。展示が終わったらオークションにかけて下さい。

大会当日は凧だけの参加で作者不明でしたが、後日全容が明らかに。

骨組みから考えれば、会報にこれまで松坂さんが発表されてきた凧のスタイルでした。

☆モデルは伊地知眞弓さん。

展示された鬼凧!



●鬼凧の有頂天

さて集計です。愛知県の研谷厚さんの「名古屋古流凧般若」は16ポイントで「有頂天」。ちなみに「やじうまシール」も28以上とこれも第三位でした。

 

 「花祭り」服部安彦さんは11ポイント、10ポイントの「般若」の中村光江さんと「般若」の加藤善実さん、9ポイントの「いぐり凧」の手島明雄さんと「裏奴」の伊地知英信さんは僅差の次点でした。

 今回の大集合の豪華賞品は、参加者の拍手と、副賞一億円(のメモ帖)ですが、隠岐の島町から「有頂天」に賞(内容不明)が授与され、さらに日本の凧の会会長賞に「般若」の加藤さんが選ばれたため、副賞の一億円(のメモ帖)は、服部安彦さん、中村光江さん、手島明雄さんの手に渡りました。

 ちなみに、やじうまシールの多かった凧は、長谷川さんの「いぐり凧」と加藤さんの「般若」で39ポイント、手島さんの「いぐり凧」34ポイントでした。

 

 江刺・江口さんは千キロ離れた仲良しの二人で合作。中川さんは毎回とても可愛らしい絵で参加。春田さんは薩摩川内のセミに続いて凧の普及に努力されました。渡辺さんは見事な羅生門。高草さんは100年の時間を超えて基一をよみがえらせました。今回のお題は大江さんのためにあったようなものです(凧もお酒も)。地元の手島さんは洗練されたいぐり凧で圧倒。永由さんは性能と機能だけでなく洒落っ気も発揮されていました。濱さんは百足の顔を鬼にしたのですが、ずいぶん空高く揚げていました。田中さん巨大な三ッ目鬼凧が目立ってました。重そうでしたが見事に飛翔。中村さんは何枚か作られて、どれで参加されるか悩まれていました。最後に決断された理由はなんだったのでしょう。中村光江さん見事に一億円(のメモ用紙)。加藤さん前夜祭で凧の目を光らせて注目を浴びました。服部さんバナナの箱から取り出した花祭りで一億円(のメモ用紙)。個性的な鬼1と鬼2を作られた山田武嗣さんは二枚参加で表が割れたのがとても残念。佐々さん角が折れなくてなによりでした。研谷さん有頂天。大活躍でした。福井さん凧が大きすぎて展示のときに皆さんの目にはいらなくて残念。でもよく揚がりました。長谷川さん、チームワークもよくて見事に揚がっていました。寺岡好徳さん寺岡紘子さんハイブロウな鬼の解釈でびっくり。この発想は世界に通用するものですね。

 

仲間さんクバの凧をお送りくださいました。前夜祭でも目立ってましたよ。

三本木さんのシャクシメーも隠岐の人の垂涎の的でした。