セミ大集合

 

2010.10.30-31 鹿児島県・薩摩川内市


●テーマを決める

テーマは九州薩摩川内ということで「セミ凧」に決めた。会報の表紙をサインにする約束してこれが定着すれば参加者も楽しめると思ったからだ(だから次回は「トンビ」を考えている)ほかにも「アスペクト比の高い凧」「左右非対称の凧」などの提案もあったのだが、まず参加しやすい具象的な「お題」からはじめようと考えた。たとえば今回の「せみ凧」なら、創作も伝統すべて参加することができる。テーマを発表した段階で、アブはだめですか、という質問があった。アブはアブで凧としては独自の分野があるとして今回は駄目だという判断をした。ただし受け付け時に、自分でこれは「せみ」だという主張をすれば受け入れることにもした。今回は後手にまわってしまったのだが、ひとりで複数の凧をエントリーさせる場合のことも考えた。どれか一枚を参加の凧とし、他の凧は審査外の「特別参加」ということで展示してもらうことにした。

 

 準備の段階でいちばん困ったのは、参加枚数が把握できないことであった。「ほめシート」は各自に作ってもらうとして、エントリーシート(参加者への説明書き)や参加章、イベントを盛り上げるための小道具をどれだけ用意したらよいのか見当もつかない。とりあえず40人参加として、諸々の準備をはじめた。予算がないのも困った問題で、安全ピン、名札入れ(これはトレカの袋を流用)、飾りつけのモールなど、3〜4000円を出費した。また参加者への礼状と記念写真の焼き増しなどほぼ同額がかかった。実際には「やじうまシール」を販売してこれらの経費に充てることも考えていたのだが、今回はそこまで手がまわらなかった。次回は収支があうように企画したい。

 

●そして当日

鹿児島への台風の接近が心配されたが海上に抜け、10月30日は天気はなんとか持ちこたえた。心配なのは石垣から向かっているみなさんが遅れていること。シールを貼るときに全部の凧がそろっていないと公平な「ほめ合戦」ができない。例会と懇親会が行われる会場にはすでに30枚ちかいセミ凧が展示されている。受け付け、凧懇談会、例会の取材などコマネズミのように走り回りながら、セミ凧大集合のようすをうかがう。人垣ができて、それなりに賑わっている。数としても、まあこんなもの。そんなことを思っているあいだに、石垣から添石邦男さん三本木善吾さんがセミ凧を持って到着。これで全部がセミ凧大集合が完了した。乾杯の発声を合図に「ほめシール」を貼ってもらう。また自分も参加したいという人が多いため、急遽「やじうまシール」も配布を始める。それぞれの「せみ凧」にぶら下げられた「ほめシート」には、シールがならび、なかなか賑やかになってきた。面白いといっては失礼だが、千葉県の春田親邦さんの「ウォーキングカイト」は、たちまちのうちに消えてしまった。持ち去られてしまったのである。全部で24枚。これも立派な「ほめられた」ポイント数である。また、千葉県の松本和夫さんは台風の接近で参加できなかったが、夫人の純子さん、息子の港くんが父の凧を持って参加。このセミ凧も当日どうしても欲しいという人の手に貰われてしまい、翌日の大会は手ぶらになってしまった。これもひとつの「ほめられた」結果といっていいだろう。

 

●これが大集合だ

大集合した「せみ凧」をエントリー順に紹介していこう。凧のコメントは「ほめシート」に書き込まれてあった「自慢」、ポイント数とは「ほめられた数=シールの数」、そのあとの数字は評価外の「やじうまシール」の数を表す。たとえば(9ポイント12)とは、九人の参加者に「ほめられ」、12人の「やじうま」(評価外)にほめられたことになる。なおそのあとにカッコ内の数字がある場合は、自分に入れたり、同じ人が二回貼るなどの無効シールの数/評価外)。もっとも良くほめられた「有頂天」(ベストパフォーマンス)が同ポイントの場合は「やじうまシール数」も評価に考慮した。

伊地智英信


四枚翅ぜみ

伊地知英信

実際のセミとおなじように四枚の翅(風袋)をもつ姿と、ネオ民芸凧風のデザインをしました。

竹は胡麻竹を使っています(9ポイント12)

 

孫次せみ凧 

春田親邦

金長特殊製紙の糸入り凧用和紙を使ってみました(8ポイント5)

まごじセミ凧

竹内義博

北九州戸畑区で祖父孫次が考案した凧。現在「孫」が「次」いで凧を作っている。昔ながらの竹と和紙を使い、骨太で強風に耐える凧。うなり、わらの尻尾をつける

(12ポイント9(1)


モダンセミカイト

茂出木雅章

モノも応用で使い道があります。虻蜂とらずセミの戯言。ミンミン鳴かないで、バタバタするのが難点(7ポイント17)

 

セミ凧

手島明雄

隠岐いぐり凧一筋の父が「セミ凧大集合」に参加すべく、初めてセミ凧を作りました。試し揚げのあと、しっぽをつけて良く揚がるように改良。。。あれ? 形が違うだけで、ほぼいぐり凧に見えてくるのは私だけでしょうか。凧を裏返して骨も見てください。初作品なので、お手やわらかに、、、(娘/母)。

(12ポイント23)

せみの連凧

松尾邦昭

せみ凧五種を連凧にしました。①香川県高松讃岐せみ。②香川県詫間せみ。③静岡県大須賀せみ。④大分県大分せみ。⑤福岡県北九州戸畑孫次せみ。以上『日本の凧大全集』より(13ポイント23)


光るせみ

金子智義

斜めの光をうけると綺麗です。ポリシートを貼る工作が大変でした

(15ポイント14)

風子凧

吉田明

空、その愛をテーマに作りました。大空に広がる自由の夢。点遊斉風子

(14ポイント12(1)

孫次型セミ凧

関口真一

昨日夕方仕上がりました。

北九州孫次凧のちょっと変形です。

(9ポイント10)

 

 


セミ・ヌード

高桑雅巳

セミはセミでも!

(12ポイント10/凧の一部分に貼られたシールも有効とした)

名古屋古流凧

研谷厚

①名古屋古流凧は、百年以上年を重ねた「すす竹」で作る。②江戸時代武家の老人たちが競って作った。③名古屋の冬の強風にもビクともせず揚がる。④揚がり方は、静止して、振って、操作もできる。⑤凧より長い唸りを乗せる。⑥結び目は二重以上巻かない。⑦絵は表裏同じ絵柄とする。⑧見せるときは裏の骨組みを見せる。⑨蝉凧以外にバラエティーに富んでいる(23ポイント51(1)

 

 

名古屋古流凧

佐々津岐是

①名古屋古流凧は、百年以上年を重ねた「すす竹」で作る。②江戸時代武家の老人たちが競って作った。③名古屋の冬の強風にもビクともせず揚がる。④揚がり方は、静止して、振って、操作もできる。⑤凧より長い唸りを乗せる。⑥結び目は二重以上巻かない。⑦絵は表裏同じ絵柄とする。⑧見せるときは裏の骨組みを見せる。⑨蝉凧以外にバラエティーに富んでいる(23ポイント51(1)


泣くセミ

木村薫

開催地ゆかりのイメージで制作。有りそうーで、無かったオンリーワンの凧。

欠点をカバーして揚がれ!(14ポイント6(1)

詫間せみ凧

小土井米子

形は古いが色は新しい配色を考えてみました(16ポイント22)

 

大須賀せみ凧

小土井昭

色の鮮やかなところをアピールします(17ポイント30)


セミ凧

金本昌宏

(6ポイント7)

 

ジージー蝉

小口峯一

ジージージーと鳴く珍しい蝉凧です。羽もできるだけ本物に近く、広く、長くしました。風袋凧として安定感グーです(23ポイント10(1)

セミ凧

江口滉一

長崎壱岐の鬼凧の名人土肥寛二(玄洲)さんの作品。評価外の参考出展です

(24ポイント29)


安芸のせみ

松本興二郎

雨にも負けず、虹色のジャンボゼミが平和を願って鳴きます! 揚がります!! 各地のセミ凧を参考に製作しました。目玉作りが大変でした

(25ポイント10(1)

八重山せみ凧

三本木善吾

いと目糸と揚げ糸はアダンの木根を削いで編んだ紐を使っています。これは八重山独特のものです。和紙は60×90を目一杯使っています。羽の部分は光があたると透き通って見えます。唸りは月桃の茎を削いでいます。アダンと月桃の実物を見てください〈最後の一行は赤字で強調!〉(17ポイント47)

セミ凧

添石邦男

八重山伝統凧のひとつです。最近では作る人も少なくなりましたが”セミ凧大集合”を機会に作ってみまし

た。伝統的な形ですが、デザイン、色つけが難しいですね。同じデザインで「シャクシメー」も作ってみました。親(主)の元へ子ゼミ(シャクシメー)がうまくじゃれ合うのが楽しみです

(7ポイント23)


セミ凧

早津田裕二

しっぽをつけなくてもあがる。骨組も見てください(17ポイント19)

クマゼミ凧・雌

兼広勝年

①風受けは、和紙ではなく発泡スチロール(プチプチ)で製作。②垂直板による一本糸目。③雌ゼミで、メタボも進行し、減量(切り抜き)で対応。④雌ゼミで、鳴きません(ウナリはなし)。⑤更年期に入り、シッコも長い。⑥セミ凧大集合を、一週間まえに気づき、昨日(三日間)完成し、実戦でテスト。⑦足をつける間がなく、足なし凧(セミ)となりました。⑧今後は雄セミ凧で鳴かせ(ウナリをつけ)たい(12ポイント45(8)

大坂セミ凧

濱中慶久

セミ凧は初めて製作。ウナリのテープ取り付け方法を変えた。紙テープのみで貼り付けている。耐久性は不明だが修理は楽にできる(14ポイント13)


冬の蝉

松本港

わかるかぁ〜! わかんねぇだろうなぁ〜!! 薩摩、長州、土佐。

下総の国船橋海族。☆凧が他の方に貰われてしまい審査できませんでした。

参考記録(2ポイント4)

冬の蝉

松本和夫

わかるかぁ〜! わかんねぇだろうなぁ〜!! 徳川、會津、新撰組。

下総の国船橋海族。☆凧が他の方に貰われてしまい審査できませんでした。

参考記録(2ポイント7)


 岩槻セミ

川口顕裕

微風でよく揚がる凧です。若干色が流れてしまいましたが、

それだけ歴戦の強者です  (11ポイント5)

大坂こつまの蝉

坂井定男

百年ぶりに大空に舞います。大坂勝間の蝉や、よく揚がりますよ

(8ポイント16(1)


奴蝉鮹

木村矢三

永く奴凧を作り、楽しんでいることから、この奴凧は『凧大百科』のなかから「東京蝉凧絵」を参考にして作りました。色柄も鮮やかでこの奴凧は弱風から中風用によく揚がるので、揚げてて楽しくなる奴凧です。皆さんもこの奴凧を作って楽しんでみてはいかがですか。

(23ポイント49)

ミックスゼミ

井上義男

セミ凧の羽根を鳥凧のように広げてみました。この糸目では背面飛行になっちゃう? でもさ、セミも、たまには背面飛行したくなることもあるんだよね。クマゼミを作るつもりで始めたのに透明な羽根に支柱が丸見えとなり、どうにもならず羽根だけをアブラゼミに変更した。ゆえにみっくすゼミと命名しました。反省点。初志貫徹せよ。初めからやり直せ(24ポイント28(+1)


         騎西のセミ

         青木得二

廃絶した伝統凧を復元しました。軽い凧なので微風でも揚がりますが、

強い風にも結構持ちこたえます(9ポイント8)



●セミ凧の飛翔

大会当日は降水はないものの地面は濡れていた。テントにセミ凧を集めて、開会式のあとにセミ凧大集合の記念撮影を行った。その後、それぞれ揚げてもらったのだが風が弱く、皆さん苦戦していた。長野県の小口峯一さんのジージーゼミは、腹部の回転ドラムがこすれて発音するようになっており、その発明の成果を披露するために、無風の会場を心配になるくらい走りまわっていた。大会自体の時間が午前中しかないため、飛翔審査もあわただしい。「あまったシールありませんか〜」と、スタンプラリーの様相も帯びてくる。まあ、これも楽しい遊びのうち。けっきょくもっとも多くの人にほめられた「有頂天」(ベストパフォーマンス)は、「安芸のせみ」(広島県・松本興二郎さん)となった。しかし、つづく五枚の凧も、一ポイントずつの差という接戦。今回は六枚六人が「有頂天」になった、と考えていいだろう(別表をごらんください)。

 

●寄せられた声

こんばんは。名古屋の佐々です。ちょっとだけ感想を送ります。全国の諸先輩をさしおき、蝉凧と言えば名古屋古流凧です。俺たちの世界です。入れ込んで鹿児島に乗り込みました。

 そして、あの手、この手で見せびらかし、呼び込みまでし、周りが見えませんでした。

 集合写真を見てビックリ! 色彩豊かな凧、蝉そっくりの凧など先輩諸氏の素晴らしい出品凧を見て、「井の中の蛙」、気恥ずかしい思い出いっぱいでした。おそまつ! でも、全国の仲間と交流が出来たので楽しかったです。面白い企画だと思いました(愛知県・佐々津岐是)。

 

「セミ凧大集合」の集合写真ありがとうございました。集合写真のなかに私の連凧が写っていませんが、途中で切れてバラバラになったので出すことができませんでした。揚がっている写真をお送りいたします(撮影は広井力さん)。会報第七九号の「セミ凧大集合」の頁(二四六頁)を見ていたら、詫間のセミと北九州の孫次のセミが並んでおり、連凧を作りたくなったのです。大須賀のセミ、高松のセミ(讃岐のセミ)、大分のセミと五種類を作りました(熊本県・松尾邦昭)

 

●結果は

ほめシールを集計してみると、もっともほめられたのは、25ポイントの「安芸のせみ」(松本興二郎さん)となるが、続く、「ミックスゼミ」(井上義男さん)は24ポイント、「名古屋古流凧」(佐々津岐是さん)、「奴蝉鮹」(木村矢三さん)、「名古屋古流凧」(研谷厚さん)、「ジージー蝉」(小口峯一さん)は、なんと23ポイントで同点。厳密に言えば「有頂天」は、松本さん。大らかに言えば、松本さん、井上さん、佐々さん、研谷さん、小口さんが「有頂天」ということになろうか。ちなみに続く「八重山せみ凧」(三本木善吾さん)、「大須賀せみ凧」(小土井昭さん)、「セミ凧」(早津田裕二さん)、「詫間せみ凧」(小土井米子さん)、「光るせみ」(金子智義さん)、「大坂セミ凧」(濱中慶久さん)、「風子凧」(吉田昭さn)、「泣くセミ」(木村薫さん)、「クマゼミ凧」(兼広勝年さん)以下きりなし…も僅差でした。

 

「遊び」に付き合ってくださった皆様、野次馬として応援してくださった皆様、ありがとうございました。

 

参加者自身による審査風景

真剣な眼差しの参加者=審査員